ふ、と私の腕を掴んでいた手が離れ、一瞬肩から力が抜ける。
だがその刹那、腕を再び掴まれ、強く引っ張られた。
思わず目を瞑り、先程のような背中への衝撃を待つ。
「―――・・・・・・?」
だけど
きたのは、全身を包む温もりと、いっぱいに広がる希彩の香り。
そこで私は希彩に抱き締められていると気づいた。
「・・・・・えっ・・・・?」
な、何で・・・・
怒ってるんじゃ・・・・・?
体を強張らせながら、恐る恐る希彩を見上げる。
「・・・・・・希彩?お、怒って・・・ないの・・・?」
すると
ポツ
「っ・・・・・・?」
目元に、温かい何かが落ちてきて、思わず目を瞑った。
それは冷たい雫となって、頬を伝い落ちる。
「・・・・・・えっ・・・・」
思わず声をあげてしまった。
希彩が、涙を流している。
切なげに眉を寄せて、はらはらと泣いていた。
今度は私が目を見開く番だった。
「・・・・・ちょ、え・・・・・・?」
「・・・・嫌です。嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です!」
希彩は突然狂ったように頭を振り、ただひたすら嫌だと繰り返す。
「ごめんなさい凱那さんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・!」
「希彩、何・・・怒ってないの?」
私の問いなんてまるで聞こえていない。
希彩は涙を流しながら、言葉を続けた。
「・・・・・凱那さんを、失いたくない・・・。お願いです。僕から・・・・・・もう、離れていかないでください・・・!もう二度と、貴方を離したくない・・・!」
・・・・・・・・・二度と?
・・・・・・もう?
「・・・・・・・希彩・・・・どういう事?」
「・・・・え・・・・?」
私がそう聞いた瞬間希彩は、涙に濡れ、赤く充血した目を見開き、ピタリと体を強張らせた。
私はさらに詰め寄る。
―――・・・・夢咲も言ってた。
また
もう
前に一度あったような、言葉。
