十五の石の物語





「こんばんは。夜分、申し訳ありません。」

私は扉を叩き、声を掛けた。



「誰だい?」

家の中から、髪は白いが、元気の良さそうな老人が顔をのぞかせた。



「失礼ですが、あなたはミカエルさんでしょうか?」

「あぁ、いかにも。
わしはミカエルだが、あんたは…?」

「私はレヴ・アレクサンドル・ド……いえ、レヴと呼んで下さい。
実はあなたにお訊ねしたいことがあるのです。」

「訊ねたいこと?
一体、なんだね?」

ミカエルは少し薄くなった白髪のせいで老いた印象があるが、頭も耳もまだ矍鑠(かくしゃく)としており、反応も早い。



「実は……」

私が玄関先で行商人の集まる町のことを訊ねかけた所、老人は私を家の中へ招き入れた。



「こんな所に訪ねて来る者なんて、滅多にいなくてな。」

ミカエルは私の訪問を心から喜んでいるようだった。
私は早く話を聞いて宿へ戻りたかったのだが、その思惑とは裏腹に、ミカエルは私をテーブルに着かせると「うまいものを作ってやる!」と言って台所に入ってしまった。



「せっかくですが、急いでおりますので…」

そう言いたいのだが…何度もその言葉を口にしようとするのだが…
台所から聞こえる上機嫌の鼻歌を聞いてしまうと私にはなかなかその言葉が言い出せない。

結局、私は落ち着かない気分でミカエルの手料理が出来上がるのを待つ羽目になった。