私達はまずはこのあたりから一番近い大きな町へ行き、そこで南の森と森の民の情報を探すことにした。
町へは二〜三日かかるという話だったが、それもそのはず、険しい山を一つ越えた所にその町はあったのだ。
しかし、人一倍優れた方向感覚を持つヴェールと一緒だったためか、一度も間違う事無く、目的地に進むことが出来た。

植物の多い所に来たせいなのか、先頭を歩くヴェールは心なしかいつもより元気そうに見えた。
彼は、自分には「植物が混じっている」と言うが、それがどういうことなのか詳しい事は私達にはわからない。
本人にもよくわかっていないのではないかと思う。

髪が少しずつ黒くなり始めてきたヴェールは、普通の人間となんら違いはないように思える。
すると、森の民の話も現実なのか、それともただの絵空事なのか、はっきりと判断出来なくなってくる。
山の中を進む間に、私達は数人の商人らしき者とすれ違ったが、幸いな事に薄暗い時間だったためにヴェールのことを訝しがる者はいなかった。
そうでなくとも今の彼なら、明るい場所でもそれほど人目をひくことはないと思われる。
もちろん、それにはまだ帽子や手袋も必要なのだが。しかし、もう少し暖かくなって日焼けでもすれば、彼の皮膚の色はますます目立たなくなることだろう。
今はそんなにきつい日差しではないが、ちょっとでも陽のさす所をみつけると、サリーはヴェールの手を取って太陽の方を向いてしばらく立っているようにと指示をしている。
太陽に慣れてないヴェールは困った顔をしながらも、サリーの言うことに素直に従う。
今の日差しでは日焼けはしないだろうが、それでも、少しぅらいは効果があるかもしれない。
私はそんな二人のやりとりを見ながら、なんとなく満ち足りた気持ちを感じていた。