「うわ〜!ヴェール!かなり変わったねぇ!」

「本当に効き目あるんだな。」

「え!?何?
じゃ、ジャンは効き目もわからず、ヴェールに試させたの?」

サリーは、呆れたようにジャンの顔をみつめた。



「俺はまだ白髪なんてないから使ったことがないし、親父も結局使わず仕舞いだったからな。」

「なんだ、それ。
じゃあ、ヴェールは実験台みたいなもんだってことかい?」

「実験台だなんて大袈裟だな。」

ジャンとサリーは同じ位の年令のためか、とてもよく気があっているように見えた。

使う回数が増すごとに髪は黒く染まるのだという。
ジャンの薬のおかげでヴェールの髪の問題が少し解消され、これからの旅がしやすくなったように思える。

四人で食卓を囲み、結局、この日は遅くなったためジャンの家でしばらく休み、まだ夜が明けきらない暗いうちに出発することに決まった。



「ありがとう、ジャン!君にはとても世話になった。」

「いや…俺の方こそ…
こんなに楽しい思いをしたのは久しぶりのことだったよ。
実は、行商以外の客が来たのもかなり久しぶりのことでな…」

ふっと微笑むジャンの顔に一瞬暗い影がさしたように見えた。
私は明るく見えるジャンの心の中の闇のようなものを見たような気がした。



「ジャン!この旅が終わったら…また遊びに来るね!」

「あぁ…待ってるよ!」

私達はジャンに手を振り、歩きだした。
今度の旅はいつもより楽な旅になりそうな予感がする。
なんせ、今までとは違い、行き先が明確にわかっているのだから。



***

思いがけない出会いから、重要な手がかりがみつかった。
ヴェールが、森の民に会えるのもそう遠い日のことではないだろう。
三人の心に明るい希望の光が灯った。



4.菫青石〜Fin