本当に、これがヴェールのためになるのだろうか…?
森を出ることが本当に彼のためになるのだろうか…?

私はそんな迷いを胸に抱いていた。



「ヴェール…本当に良いのか?」

「……はい。もう決めたことですから…」

それが本心なのか、それとも無理をしているのか。
彼の真意は私には読み取れなかった。



「では、行こう。」



何度も訊ねれば、彼のせっかくの決意がますます揺らいでしまうかもしれない。
そう考え、私は率先して家を出た。
ヴェールはそれに続き、長年住み慣れた家を一度も振り返ることなく歩き始めた。
きっと、振り返ってしまうと迷いが大きくなるから、無理をしているのだろう。



ヴェールの未練を断ち切るためにも、少しでも早く家から離れようと、私はいつもより早い速度で歩いた。
何の言葉をも発することなく、私達ただ黙々と歩き続けた。
その速度にサリーは息があがって、しゃべりたくても苦しくてしゃべれないでいたことに、私は少しも気付いてはいなかった。