十五の石の物語

「もしかすると、ネリーさんは、先に東の森へお連れした方が良いかもしれませんね。
あの家や肖像画を見れば記憶を取り戻すかもしれません。」

「しかし、そういうことをするには、ますますジネットさんを待たせることになるな。」

「……この際、ジネットにはなにか理由をつけて別れてもらうしかないんじゃないかな?」

ヴェールの顔に暗い影が射し、不安そうに私をみつめた。
ヴェールとしては今後もジネットと同行したいのだろう。
しかし、今の状況を考えるとそれはとても困難なことのように思える。



「……彼女には申し訳ないが、それが良いのかもしれないな…」

「……ジネットさんにもお話をして……いえ、やはりそうするしかないのかもしれませんね。」

ヴェールもやはり頭では理解出来ていたようだ。



「では、ジネットさんには理由をつけて別れてもらうことにしよう…
そうだな。私達は兄弟ということになっているから、故郷へ帰ることになったとでも……」



(……故郷…
そういえば、石のせいで思わぬ遠い所へ来てしまったが…
私は再び家へ帰ることは出来るのだろうか…?)



私には急に家が途方もなく遠い所へあるように感じられた。
とてもじゃないが、たどり着くことの出来ない果てしなく遠い場所に……

脳裏に懐かしい両親や身の周りの世話をしてくれていた使用人達の顔が次々と思い浮かぶ。

そして、朝起きるといつもみつめていたお気に入りのあの静かな湖……



(……もう二度と見ることは出来ないかもしれない…)



その瞬間、まわりの景色がゆらゆらする感覚に陥り、私はそのまま意識を失った。