十五の石の物語

しかし、これが本当にネリーの夫だとすれば、またしてもヴェールの恋は破れてしまうことになる。

私は、そのことに気遣い、心を痛めたが、ヴェールは健気にそのことを隠しているのか、傍目には特に気に留めていないようにさえ見えた。



(……ヴェール…)

その後、他の部屋も見てまわったが、取り立てて目をひくものはみつからなかった。



やがて、日が暮れ、静かな夜が訪れた。
空には美しい月が浮かんでいる。
私達は月灯りの中をゆっくりと散策していた。



「次はどちらへ行こうか…」

「そうですね。やはり、北へ行ってから、西へ行く方が距離的には近いように思いますが…」

「でも、重要なのは近さじゃないよ。
どっちに森の民がいるか…ってことだよ。」

「それはそうだが…それは行ってみるまでわからないことではないかな?」

自分で言ったことながら、あまりにも当たり前の話だ。



「カンしかないということですね」

「そういうことだ。だから、次に行く場所は君が決めれば良いだろう。
もし今度みつからなくとも、その次にはみつかることがわかっているのだ。
焦ることはない。」

「……そうですね…
では…今夜中に決めます。」

「じっくり考えて構わないのだぞ。」

「ありがとうございます。
しかし、考えすぎると余計に決断がつきかねますから、今夜中に決めることにします。」

私は、黙って頷いた。

ヴェールには、焦るなと言っておきながら、その実、私が一番焦っていた。
出来ることなら、次に向かう場所に森の民がいてほしい。
私に何事かが起きる前に、問題を解決しておきたいと願っていたのだ。