十五の石の物語





私はこれといったあてもなく、ぶらぶらと町を歩いていた。



(これまであわただしく旅をしてきたせいか、急にゆとりが出来ると却って困るものだな…)

大きな町ならともかく、この町には娯楽施設と呼べるようなものもない。

そんな時、私の目にある一軒の店が映った。
私はそこに引き寄せられるように近寄って行った。



「いらっしゃいませ!」

扉を開けると、気持ちの良い笑顔を讃えた女性が出迎えてくれた。



「いらっしゃいませ。
今日は何をお探しでしょうか?」

私は店内を見回した。
そして、ある一点の商品の前で目を停めた。



「すみませんが、あれを…」

「はい。これでございますね。」

店員が差し出したのは、薄いピンクにコスモスに似た可憐な花びらが描かれた生地だった。



「奥様へのプレゼントですか?」

「いえ…あの……妹です。」

「それは失礼しました。
で、どのようなものをお作りいたしましょうか?」

「私は男だから、どういうものが良いのかよくはわからない。
22〜3の娘に似合うものに仕立てていただきたいのですが……」

「採寸しなくて大丈夫ですか?」

「体格は幸いにもちょうどあなたと同じくらいだ。
背はあなたよりほんの少し高い。」

「難しい注文ですね!
でも、却って作りがいがありますわ。
この生地でしたら、女性らしいデザインの方が良さそうですね。」

「そうですね。
なにしろ気の強いはねっかえりなものですから、少しでも女性らしく見えるデザインでよろしくお願いします。」

「わかりました。
一週間程かかると思いますがよろしいですか?」

「ええ、よろしくお願いします。」

突然の思い付きで、私はサリーの服の仕立てを頼んだのだ。



(……まぁ、良い…
もしかしたら、旅が終わった頃には私の身に何かがあるかもしれないのだから…
いや、旅が終わる前かもしれない…
そもそも、何をもって旅の終わりというのか…?)

そんなことを考えると、私はまた気分が滅入ってくるのを感じた。