(…こんなことは誰にも言えない…)



私は指輪のことは自分の胸に秘めておくことに決めた。
話したところで解決策がみつかるとは思えず、無用な心配をかけてしまうだけだと考えたのだ。
最悪の場合、話したことで何か迷惑をかけてしまうかもしれない…
これから先、何かが起ころうとも、それは自分だけで受け止めていきたい…
そう考え、私は誰にも話さないことに決めたのだ。



「あ、町が見えてきたよ!あそこだね!」

聞いていた通り、さほど大きくない町だが、緑が多く町の至る所に色とりどりの綺麗な花が植えられた花壇が整備されている。



「なんだか可愛い町だね!」

「本当に居心地の良い素敵な町ですわね。」

私達は町の中心部にある陽当たりの良いカフェに入った。
扉を開けると人懐っこい笑顔のウェイターが私達を出迎えてくれた。



「ここは、ずいぶんと美しい町ですね。」

食事を運んでくれたウェイターにヴェールが声をかけた。
ウェイターはにっこり微笑み「えぇ…ここは愛の町ですから…」と、答えた。



「愛の町~?なに、それ?」

「お嬢さんは、ロードナイトという石をご存じですか?」

「知らないよ。どんな石なのさ?」

「ロードナイトとは、異国の言葉で『薔薇』という意味なのだそうです。
とても女性らしいたおやかな色をした石なのですが、この近くにそのロードナイトの採れる洞窟がありまして、そのあたり一帯には不思議なことに一年中綺麗な薔薇が咲きほこっているのです。
はるか昔、ある事情から結婚を反対された恋人達が、その場所のロードナイトになんとか両親が二人の仲を許してくれますように…!と、祈ったところ、両親がなぜだか急に二人の仲を許し、そして二人は死ぬまで愛し合い幸せな生涯を過ごすことが出来たという伝説があるのです。
今はもう採掘は行われていないのですが、二人が祈りを捧げたとされるロードナイトは今もまだその場所にあり、今でもたくさんの人々が愛と幸せを祈るために訪れているのですよ。」

話し終えると、ウェイターはどこか照れ臭そうにはにかむ。