「おばさん、アベルが帰って来たらびっくりするだろうね!」

「そうだろうな。
しかし、なによりも嬉しい驚きだろう…
ご主人を亡くされた後、気丈にもお一人で店をきりもりされてはいるが、内心はとてもお寂しいだろうと思う…
そんな時にアベルさんが帰って来られたら…」

「そうだろうね…
これからって矢先に旦那さんが死んじゃったんだもんね…
明るく振舞ってても、内心はきっと寂しいはずだよね。
でも、これからはアベルがいてくれるんだ。
おばさんも元気になるさ!
…そういえば、ジネット、あんたの家族は?」

「わ、私の家族…ですか?
私の父は…もう亡くなりました…
兄弟はいませんが、故郷には母がいますわ。」

「そうなんだ…
じゃ、お母さんを一人残して愛しい人を探しに来たってわけか〜!
あんた、見掛けによらずけっこう情熱的なんだね!」

サリーは、ジネットの背中を景気良く叩き、ジネットは何も言わずに俯いた。



「そんな顔しないでよ。
あたしは別にそれが悪いって言ってるんじゃないよ。
あんた、ふだんからあんまり感情を出さないから、却って人間味が感じられるって言ってんだよ。」

「すみません……」

「ジネットさん、あなたが謝る必要はない。」

「チェッ、またあたしが悪者か…
いつもこれなんだもんな…」

サリーはそう言い残すと早足でさっさと先に進んで行った。



「本当にごめんなさい。
私のせいで、いつもこんなことになってしまって…」

ジネットは、目を伏せたまま、小さな声で呟いた。



「いや、あなたのせいではない。
あなたとサリーは……そう、多分タイプが違い過ぎるだけのことです。
もう少し、時が経てばきっとわかりあえるようになりますよ。」

「レヴさん、ありがとうございます。
私も、これからはもっと気を付けるようにしますわ。」

マリアの家にいた頃は特に問題はなかったのに、なぜこんなにもぎくしゃくしてしまうのか…
この状態が続くようなら、サリーと一度じっくりと話さなければいけないと思った。