十五の石の物語

「…そうだ!」

サリーが、突然立ち上がり、手を打った。



「どうしたのじゃ?」

「ピェール!西の塔の魔女だ!
彼女に聞いたら、何かわかるかもしれないよ!」



(……西の塔の魔女…?)

その響きに、私はまた少し胡散臭いものを感じた。
二人が私のことを心配してくれていることは、私にもとてもよくわかる。
つい、さっき会ったばかりの見ず知らずの人間のことを、これほど真剣に考えているということに、多少の違和感を感じながらも、私はそのことを有り難いことだと感じていた。



「西の塔の魔女とはどういう人物なのです?」

二人に感謝の念を感じてしまうと、あまり無下にも出来ず、私は関心のあるふりをして、そう訊ねた。



「……それがじゃな…」

名案が浮かんだ!とばかりに嬉々とした顔をするサリーとは裏腹に、ピェールの口は重く表情も暗い。
黙り込んだピェールの代わりに、サリーが横から口を挟んだ。



「西の塔の魔女っていうのは、選ばれし者のことさ。
『魔女』っていうのは、あだ名みたいなもんでね。
彼女の持つ特殊能力のせいで、そう呼ばれてるんだよ。
なんたって、彼女の千里眼は、すべてを見通す。
過去のことも未来のことも、どんなに遠くのことだって彼女はすべてを知ってるのさ。
そして、どんなに難しい問題も解決出来るものすごい力をもった人なのさ。」

ピェールはサリーの言葉に深くうなずいた。



「なるほど……そんな方がいらっしゃるのですか…」

口ではそう言いながらも、私はその話を鵜呑みにしているわけではない。
むしろ、心の中では逆のことを考えていた。



(多分、少しばかり腕の良い占い師か何かだろう…
しかし、どうせ、老人を探すあてもないのだし、このアマゾナイトの色が変わったことも気になる。
ここまで来たら、その西の塔の魔女とやらに占ってもらうのも悪くはない。
特に急ぐこともないのだから……)

私はふとピェールのおどおどしたような態度を不審に感じた。