十五の石の物語

「フランツさんもお疲れになったでしょう?
ここでお休みになられますか?」

「いや、せっかくじゃから、わしは皆と飲んで来る!」

「え?」

「めったにないことじゃからな!」

フランツはそう言うと、機嫌の良さそうな笑みを浮かべ、その場から離れた。







次の日の朝…
したたかに飲んだと思われるのに、フランツはケロッとした顔をしてジネットの隣を歩く。



「山の空気は本当に良いのう~」

フランツはそんなことを言いながら、気持ち良さそうに両手を拡げ、深呼吸をする。
ジネットの足の怪我ももうほとんど良くなり、この程度の山道はなんともない程に回復していた。



(この山を越えたら、ヴェールさんに会えるのね…
あら、私ったらなにを考えているのかしら。
私にはその前にやらなくてはならない大切な使命があるというのに……)

ふと心に浮かんだそんな想いに、ジネットは赤面する。



「どうかしたかね?」

「え…?い、いえ、なんでもありませんわ。
歩くとやっぱり暑いですね。」

ジネットは、出てもいない汗を拭うふりをして言い繕う。



「……ははぁ~ん、わかった。
『大切な人』のことを考えてたんじゃろ?」

「は?……え、えぇ、実はそうなんです。」

「ええのう…若いもんは…青春じゃのう……」

フランツは、満足げに何度も頷く。



(……ごめんなさい、フランツさん…
でも、本当のことは言えないの…)

ジネットは、心の中でフランツに詫びた。