十五の石の物語




ネリーの家を出てから二日が経ち、私達はようやく山のふもとの町に着いた。



「しかし、意外と近かったではないか。」

「そうですね。こんなに町の近くにいてネリーさんは今までよくみつかりませんでしたね。」

「あのねぇ…あたし達は旅なれてるからそう思うけど、二日も森の中を歩こうと思うような奴は滅多にいないさ。
それに、ヴェールがいなかったら、あたし達だって迷ったかもしれないよ。」

「……それもそうだな。」


以前なら、遠出する時には当然のように馬車か馬を使っていた私が、いつの間にか、これ程の距離を徒歩でこなすことをなんとも思わなくなっている。
我が事ながら、妙におかしく、私は込み上げる笑いを噛み殺した。

麓の町には泊まる所がなかった。
ただ、夜通し開いているレストラン兼バーがあるらしく、私達はそこで夜明かしをすることにした。



「ま、野宿よりはマシだね。」

「サリー、言っとくが酒はダメだからな。」

「はいはい。わかってますよ!」

レストランとは名ばかりの小汚い店だったが、店内はそれなりに賑わっていた。
私達は真ん中の大きなテーブルに腰を降ろす。
落ちつかない席だが、話を聞きこむにはちょうど良い席だ。
昔のヴェールなら、絶対に座れないような場所だが、最近はずいぶんと人に慣れ、自分の容姿についても、引け目を感じなくなっているようで、何の躊躇いもなく座ってくれた。

ヴェールとは違って、元々誰に対しても物怖じしないサリーが、早速、近くの席の者に話しかけ、それとなく鉱山の話を訊ねた。
それにより、ここにある鉱山は水晶の鉱山だということがわかった。
キャストライトではなかったことは残念だったが、それは十分予測されていたこと。
キャストライト自体、森の民の森だけにあるものなのかどうかさえ、私にはわからない。

さらに、思わぬ良い話が聞けた。
山をひとつ越えた先に、蛍石と呼ばれる石が採れる場所があると言うのだ。