十五の石の物語

ヴェールは自分の身の上について語った。
自分は人間と森の民との間に生まれた子供であること、だから、母以外の森の民とは今まで会ったことがなかったこと等をすべてネリーに話して聞かせた。



「そうだったんですか…
あなたもずいぶんとご苦労なさったのね…」

「いえ…そんなことは…
私はずっと両親に愛されて暮らしてきましたから…
両親がいなくなってからは寂しい思いもしましたが、今ではこうして私のために尽して下さる信頼出来る友達も出来ました。
苦労したなんて思ってませんよ。」

そう言ってヴェールは微笑んだ。
その笑顔に、私達の顔も自然に綻ぶ。



「あなたはなんだか私にとても似てるような気がします。
私も人間のご夫婦にとても愛されて幸せでした。
自分が誰なのかさえわからないという大きな不安を抱えていましたが、ご夫婦と暮らしているうちに過去のことなんてもうどうでも良いと思えるほどに、たくさんの愛情を注いでもらいましたから…
でも、一人ぼっちになってからは正直言って寂しい気持ちになることが多いですけどね。」

「…一人ぼっちの辛さは私にもよくわかりますよ…」

切なさのこもったその言葉に、私は初めてヴェールにあった時のことをふと思い出す。
あの地のヴェールの寂しげな横顔が今も脳裏に焼き付いている。