十五の石の物語





その声に、女性は慌てて扉を閉めようとしたが、私が片足を扉に差しこみそれを阻止した。



「待って下さい!怖がらないで!」

女性は怯えた顔をして部屋の隅に後ずさった。



「大丈夫です。私達はあなたの味方ですから…」

「まさか…」

ヴェールの驚きは、私達の中でも一番大きなものだった。



「あたし達を信じて!今から理由を話すから。」

サリーは、ゆっくりと女性に近寄り、その両手を握りながらそう言った。



「……わかりました。
では、どうぞ、こちらへ…」

女性が私達のことを信じたのか、それともこうなってしまってはもう仕方がないと諦めたのかはわからなかったが、とにかく私達を部屋の中へ招き入れてくれた。



「申し遅れました。
私はレヴ、そしてこちらがヴェール、そして…」

「あたしはサリー、よろしくね!」

「……私は…ネリーです…」

女性は俯き加減に、小さな声で自分の名前を明かした。



「ネリーさん、驚きました。
こんな所に森の民が暮らしていらっしゃるとは…」

ネリーはとても艶やかで美しい長い緑色の髪をしていた。
それは薄い緑色の肌色にたいそう似合っている。



「……森の民のことをご存じなのですね…」

「ネリーさん……信じられないと思いますが、実は私もそうなのです…」

「そう…とはどういうことですか?」

「髪を染め、肌を陽に焼いていますからわからないのも無理はないと思いますが……」

そう言いながら、ヴェールはシャツの袖を上までまくりあげて差し出した。



「まぁ…!!」

ネリーはそう言ったっきり言葉を失い、目を見開いたまま、ヴェールをみつめ続けた。



「……私も森の民なのです。」

その言葉を聞いた途端、ネリーの瞳に涙が溢れ出し、ヴェールの手を取り、強く握りしめた。



「会えるなんて思ってなかった…
同じ種族の者に会えることなんて、一生ないと思ってました…」

私はネリーにハンカチをそっと差し出した。
ネリーは、ハンカチで涙を拭うが、流れ出る涙はなかなか止まらなかった。