足を痛めているせいで、思うように進めないことにジネットは苛立っていた。
それほどひどい痛みではなかった筈なのに、以前来た時よりもよりもずいぶんと長くかかってしまっていることが、ジネットの焦りを強くした。
ようやく町に着いたジネットは、あたりを見渡し、目に止まった古いホテルのフロントでヴェール達のことを訊ねてみることにした。



「あの……何日か前に、こちらに背の高い男性二人と女性の三人連れが来られなかったでしょうか?」

「あぁ、学者の兄弟だな。
彼らならここに泊まってたがもう発ったよ。」

「えっ?学者…?」

「違うのかい?」

「あ…いえ、そう…その方です。
男性はお二人共髪が長くて、お一人は銀髪、もう一人の方は黒髪で……」

「そうだ。間違いないね。
あんた、あの人達の知り合いなのか?」

「え、ええ、そうなんです。
それで、その方達はどちらへ行かれたのでしょう…?」

「彼等はなんでも伝説について研究しているとかで、確か、フランツ爺さんの所へ行ったようだが……」

「そうですか!どうもありがとうございます。
それで…そのフランツさんのお宅へはどう行けば良いのでしょうか?」

ジネットはフランツの家を教えてもらい、一休みすることもなくそのまま険しい山道を歩き出した。



(なぜ学者だなんて…?
それとも本当に学者さんなのかしら?
でも、確かご兄弟ではないはずなのだけど…)



いろいろと不思議に思うことはありつつも、ヴェール達の足取りが掴めたことは、ジネットを勇気付けた。