「マリアさん…
私、追いかけてみます!」

「そうよ!ジネット!
今からだったらきっと追いつけるわ!
彼らは隣町のことを聞いてたから、きっとそこへ行ったはずよ。
以前一緒に行ったことがあるでしょう?
あの小さな町よ。」

「ええ、わかります。
マリアさん、本当に…本当にどうもありがとうございました…!」

「私は何もしてないわ。
それよりもあなた、足は大丈夫?
今から薬草や食料を準備するわね。」

マリアはそう言うとてきぱきと旅の準備に取りかかった。
ジネットもわずかな衣類や日用品ををまとめた。
しばらく暮らした自分の部屋を見回しているとなんとなく寂しく、心細いを感じる。



(これから先、マリアさんは一人で大丈夫なのかしら?
ヴェールさん達は私を受け入れて下さるかしら…?)

様々な不安や心配がジネットの頭の中をぐるぐる回る。
しかし、今はそんな事を考えている暇はない。
今を逃したら、また気持ちが揺らいで進めなくなってしまう事をジネットはわかっていた。
ジネットはぶんぶんと首を振って立ち上がり、部屋を後にした。



「ジネット…頑張るのよ!」

「マリアさん…!!」

ジネットはマリアに抱きついた。



「あなた、本当はすごい泣き虫だったのね…
でも、泣いてる暇なんてありませんよ。」

マリアはジネットの涙を指で拭い、そして強く抱きしめた。



「どうしてもダメだと思ったら、ここへ帰って来るのよ。
私はいつでもあなたのことを待っているから…
でも、帰って来るのは『どうしてもダメ』な時だけですからね。
そうじゃなかったら追い出しますからね…!」

「マリアさん…
私…必ず、この石を届けて見せますわ!」

「そうそう、その意気よ!
行ってらっしゃい!ジネット…!」

ジネットは何度も振り返りながらマリアに手を振る。

ジネットの姿がゆらゆら揺らめき、少しずつ小さくなってやがて見えなくなった…



(…頑張るのよ…
あなたならきっとやれるわ…)



マリアは心の中で呟いた。