十五の石の物語

「いや〜、しかし、ここに人が訪ねてくるのは何年ぶりのことじゃろうな。」

老人はさっきとはうって代わり、すっかりご機嫌の様子だった。
居間の食卓にお茶と果物を用意し、さっきよりもさらににこやかな顔を皆に向けた。



「本当に久しぶりのお客じゃ。
あんたらどこから来なすったのかね?」

その質問を皮切りに、お天気の話、町の話、畑の話、若い頃の話と途切れることなくフランツのくだらない話は続いた。
私は途中で何度も口をはさもうとしたのだが、まるで入る隙がない。
サリーでさえ、相槌を打つのが精一杯だった。
ずっと一人で暮らしていたため、しゃべりたくてたまらなかったのだろうと諦め、私はフランツの話題が尽きるのを待った。



「……という話なんじゃ。
おっと!なんてこった!
もうこんな時間になっとる。
道理で腹が減るはずじゃ。」

そういうと、老人は急に立ち上がり台所に向かった。
サリーが気を利かせ、手伝いに行く。
部屋に残された私は妙に疲れを感じていた。
何も話さず、老人の話を聞いていただけなのに、なぜにこんなに疲れるのか…



(……毒気にあたるとはこういうことか…)



「それにしても、元気なご老人ですね。」

「そうだな。あんなに何時間も話し続けることが出来るのだからな。
だが、町の皆が言ってた程、年を取ってはいなさそうだな。」

「そうですね。
せいぜい…60過ぎと言ったところでしょうか?」

「そんな所だろうな。
そうでなければ、あれほどの体力はないだろう。
体力だけなら、まだ青年にもひけは取らない位、達者なように見えるな。 」

「その通りですね。
畑のことから、家畜の世話まで全部一人でこなされているようですからすごいですよね。」

私達がそんな話をしていると、おいしそうなにおいと共に食事の用意が運ばれてきた。



「あんたらが来るとわかってたら、もっとうまいもんを用意しとくんじゃったんだが。」

「とんでもありません。
厚かましくお食事までいただくことになって申し訳ありません。」