「まぁ!ジネット!どこに行ってたの?
レヴさん達、もう旅立たれたわよ!」

「すみません。
薬草を採っていたらつい時間を忘れて……」

「こんな日に薬草を採りに行かなくて良かったのに…
皆さん、あなたによろしくおっしゃってたわよ。」

「そうですか……」

そう言うと、ジネットは黙って台所へ去って行った。


ジネットが持ち帰った籠を見て、マリアは目を丸くした。
山のように摘まれた籠の中には、何の役にも立たない雑草がたくさん混ざっていたのだ。
いつものジネットなら、薬草と雑草を間違えるわけがない。
しかも、雑草は一本や二本ではなかったのだから。



「ジネット…」

マリアの声にも気づかないようで、ジネットは呆然と窓の外をみつめていた。



「ジネット!」

マリアがもう一度力をこめて呼び掛けると、ジネットは夢から覚めたようにはっとした顔で振り向き、振り向き様にスカートの裾を瓶にひっかけひっくり返した。



「あっ!」

ガシャンという乾いた音と共に瓶が割れ、あたりに幸せの水が流れ出す。



「あ、私……」

「ジネット、動かないで!」

マリアが声をかけたが間に合わず、瓶の欠片を踏み貫いたジネットの足から血が滴り流れた。



「ジネット!血が……!」