十五の石の物語

「はい。サリーさん、あなたの好きなお水よ。」

「あ…幸せの水だね。」

「早く元気になりますように!」

ジネットは、あの日から、毎日、幸せの水なるものを私達に飲ませていた。



(…そうだ…!
水汲みはけっこう重労働のはずだ…!)

私は水汲みを手伝うことを思い付いた。

食事の後に私がそのことを申し出ると、マリアは不安そうな顔のジネットに向かって頷いた。



「この方々なら、大丈夫でしょう。
お手伝いしていただきましょう。」

そう言って、ジネットに微笑みかけた。



(……我々ならば大丈夫とは、一体どういうことなのだろう?)

私にはわけがわからなかったが、ジネットの案内に黙ってついていく。
幸せの水のある場所まではけっこう長い道程だった。
そんな場所から水を運ぶのはかなりの重労働だ。



「水汲み場までは遠いのですね。
毎日さぞかし大変だったことでしょう。」

「そんなことありませんわ。
ごらんになって!
ここには木々や花々がこんなにいっぱいで、とても気持ちが良いのです。
この道を歩く度に私は気分が浮かれてしまうのです。」

「あなたもそうなのですか。
私もこういう場所が大好きなのです。」

「嬉しいですわ。私の気持ちをわかっていただいて…」

そんな二人の会話を耳にしながら、ジネットとヴェールは良い友達になれそうだと思った。



平坦な道から斜面を少し上ると、ジネットが急に立ち止まり、一点を指差した。



「あそこです。」