「今夜は満月かもしれないな…」

サリーの憎まれ口を無視して私はまるで独り言のように呟いた。



「夜になるまで少し休んでおこう。」

「まだこんな時間だよ。眠れやしないさ。」

「……それもそうだな。」


私達は、他愛ない話を続けながら、暗くなるまで時間を潰した。
あたりが暗くなるにつれ、不安と期待が心の中に大きく広がるのを感じた。
おそらく、それは私ばかりではないだろう。



「そろそろだね。」

「そうだ…これを。」

私はバッグの中から呼子を取り出すと、ヴェールとサリーに一つずつ手渡した。



「どこにどういう変化が現れるかわからない。
手分けをして探すことにしよう。
そして何事かを発見したらこの笛を吹いて合図するんだ。」

「わかった!」

私達は小屋の外へ出た。
空にはすでに美しい満月が浮かんでいた。



「じゃ、あたしはこっちに行くよ。」

「では、私はこちらへ。」

私達は美しい月を愛でるゆとりもなく、各方向へ歩き出した。

小さな変化をも見落とすまいと、私は目を凝らしあたりを見回す。
しかし、どこにも特に変わった所は見受けられない。
時間が経つにつれ、私は次第に焦りを感じるようになっていた。
もしかして自分が何か見逃してしまったのではないか…?
それとも、この場所ではないのか?
そもそも、アランの言うことがやはり真実ではなかったのではないか…?

不安と共に私の頭の中には、様々な疑問が沸き上がる。



やがて、少しずつ空高く上っていた月が真上に上がった時……
それはいきなり現れた…!



「あれは……!!」