十五の石の物語

「名前なんてどうでもいいさ。
この石は俺とあいつの友情の証みたいなものさ。
それだけで良いんだ。」

「そうだね。この際、その長ったらしい名前はやめて、フィリップの友達の名前をつけたらどうだい?」

「あんた、面白いことを言うんだな。
それも良いかもしれない。
アベルの石か……
うん、良いかもしれねぇ!」

「これからは大事にしなくっちゃね!」



(アベル…?)



私はその名前を最近聞いたことを思い出した。
石の好きな親父さん…水晶の採掘場へ何度も来ていた…



「まさかとは思いますが……それはアランさんの御子息のアベルさんでは…?」

「さぁ…親父さんの名前は覚えてねぇな。」

「宝石の行商をされてた方ではありませんか?」

「その通りだ!
あんた、アベルの親父さんを知ってるのかい!?」

フィリップが、驚いた様子で声を上げた。
ヴェールとサリーも同じように目を丸くしていた。



「知ってると言うわけではないんですが、少し関わりがありまして…」

「そうか。それはなんとも奇遇だな。
じゃ、アベルのことも知ってるのかい?」

「いえ…アベルさんのことは全く知りません。
なんでもアベルさんは旅に出たまま、行方がわからないそうですよ。」

「親父さんがそう言ったのかい?」

「いえ……残念ながら、アランさんはもうお亡くなりになっているのです。」

「えっ…!」

フィリップは大きく目を見開いたまま言葉を失った。



「昨年のことだそうです。
アベルさんはまだそのこともご存知ないようです。」

「……そうだったのか…
それは気の毒なことだな。
まだ、そんなに年じゃなかっただろうに…
それに、アベルの奴…親父さんが亡くなったことも知らずどこをさ迷ってるんだ……」

フィリップは、途端に頭を抱え、苛々した様子でウィスキーの瓶をぐいとあおった。