「しかし、本当に素晴らしく良い石だねぇ……」

男は、ヴェールのカイヤナイトを穴の開くほど眺めては、感嘆の溜め息を漏らす。


(……そうだ!)



こんなに石の好きな男なら、水上の採掘場のことも知っているのではないか?と、私は思い付いた。



「もしかしたら、この近くにあるという水晶の採掘場をご存知ないですか?」

「あぁ、知ってるぜ!」

「本当ですか!?」

男の返事に、サリーやヴェールの顔が晴れやかに輝いた。



「本当だともさ!ここからはそんなに遠くないぜ。でも……」

「何か問題でもあるのですか?」

「あそこでは事故があって、それ以来、もう閉鎖されちまってるぜ。
まぁ、事故がなくても良いものはもうほとんど残ってない位、掘り尽くされてしまったけどな。」

「その場所は?」

「あんたら、そんな所に何か用でもあるのかい?
ロクな水晶はもうないぜ。」

「水晶は別に良いのですが…」

「え?あんたら水晶の採掘場に行くのに、水晶は良いって…別に何か目的があるのかい?」

「………そ、それは……あ、ある人の思い出の場所なので、ちょっと見てみたいと……」

「その人はそこで働いてたのかい?」

「はぁ…まぁそんな所です。」

私の口から飛び出した咄嗟の嘘は、なんともよくわからない酷く下手な嘘ではあったが、幸いな事に男はそのことに特に違和感を感じていない様子で、私はほっと胸を撫で下ろした。



「そうか~…
あそこは、ちょっとばかしわかりにくい場所なんだよなぁ…」

そうつぶやくと、男は黙って黙々と目の前の料理を口に運んだ。
やがて意を決したように男は深く頷いた。



「よ~し!決めた!俺が連れていってやるよ!」

「いえ、そんな……だいたいの行き方さえ教えていただければ……」

それは遠慮だけではなく、光の途を探す時に、彼がいては都合が悪いと思ったからの言葉だった。