森の中を歩いているヴェールの顔は、とても生き生きとしている。



「ヴェール、やっぱり森の中って良い?」

「そうですね。
植物は私の親戚みたいなものですから、森の中にいるとやはりとても落ち着いた気分になれます。」

「植物が親戚か~…
良いね。
ヴェールにはいろんな所にたくさんの親戚がいるんだ!」

「えっ?!」

「だって、植物なんてこの国以外にもいろんな所に数え切れないほどたくさんあるんだよ。
ヴェールはどこに行っても親戚に会える。
一人ぼっちじゃないんだもんね。
なんだかうらやましいよ…」

「サリーさん……」

サリーの言葉は、まるで、自分には身内がいないような口ぶりで、気にはなったが、聞いてはいけないような気がして、私はあえて口を挟まなかった。
ヴェールもおそらく私と同じ想いを感じていたのだと思う。
その証拠に、彼もサリーには何も訊かなかったのだから。



行商人の町から水晶の採掘場を探して南下している間に、私達は二つの小さな町を通り過ぎた。
そのどちらでも、採掘場についての詳しい情報は得られなかったのだが、三つめの町に来た時、ようやく情報が得られた。

それは、私達がレストランで食事をしている時のことだった。
その町にはレストランが一軒しかなかったためか、単にテーブル数が少ないためか、私達は店員から相席を頼まれたのだった。



「どうぞ。私達はかまいませんよ。」

私がそう答えると、まだ若い一人の男性が現れ、私の隣の席に座った。



「すまない。この町にはここ一軒しかないから、いつもこんなことになるんだ。」

「この町へはよく来られるのですか?」

「よくってわけでもないけど、南の方へ商売に行く時はたいてい寄ってるよ。」

「お兄さん、何屋さんなの?」

「俺はちょっとした宝石を扱ってる。
な~に、そんな高価なやつじゃないぜ。
宝石っていうよりは天然石って呼ばれるやつだな。
おっ!あんたもそういうのが好きなのかい?」

若い男はヴェールのカイヤナイトのペンダントを見つけ、嬉しそうな声を上げた。