行商人の集まる町は、地図を見る限り、それほど遠くはないようだった。
旅慣れて来たせいか、特にこれといった障害もなく、私も半ば自分に降りかかろうとしている得体の知れないものの事を忘れてしまい、さながら物見遊山の旅のようになごやかな気分になっていた。
それほどまでに平穏な旅だったのだ。



「それにしても、おじいちゃんの料理はおいしかったね~!
あたし、あんなおいしい料理、生まれて初めて食べたよ。
きっとあんなのが高級料理店の味なんだろうね。」

「そうだな、彼の腕なら格式のあるレストランでも十分に通用するだろうな」

「ミカエルさんは、そんなにすばらしい腕前なんですか。」

「そうだよ~。おじいちゃんの料理はすっごくおいしいんだよ!
マジでほっぺたが落ちそうだったよ!
そういえば、ヴェールは人間の料理は全く食べたことないの?」

「……いえ、そういうわけでは…」

ヴェールは、小さな声でそう答えて俯いた。