やがて賑やかな食事もすみ、私達は、早速、行商人の町へ向かうことにした。

「ミカエルさん、本当にお世話になりました。
レストラン、頑張って下さい!」

「おじいちゃん、また来るね!」

「あぁ、待ってるよ!」

私達が家を出ようとした時、ミカエルが慌てて声をかけた。



「あ!!ちょっとだけ待ってくんな!」

ミカエルは部屋に引き返すと、小さな袋を手に戻ってきた。



「昨夜思い出してみつけだしたんだが、これはアランにもらったものなんだ。
良かったら持ってってくんな。
値打ちのあるもんじゃないとは思うんだが、なんかのお守りだとかなんとか言ってたのを思い出してな。
確か、どっかの国の言葉で『青』って意味の石らしい。」

ミカエルが私に手渡した石は、その名の通りの青い石だった。
空のように澄み切って、そして海のように深い青い石……



「うわぁ、綺麗な石だねぇ…」

「まぁ、アランのいうことだからただの石ころかもしれねぇが、なんだか綺麗な石だろ?
それで、今まで捨てずに持ってたってわけさ。
何の役にも立たねぇかもしれないが、そんな小さなもんだ。
邪魔にはならんだろう。」

「いただいてもよろしいのですか?」

「あぁ、そんなもんで良けりゃもらってくれ。」

「おじいちゃん、他にはないの?」

ミカエルは大きな声で笑った。



「残念ながらそれっきゃないのさ。
レストランで儲けたら、今度もっと良い奴を買ってやるから、待ってな!」

「絶対だよ!
約束したからね!」

「あぁ、わかった、わかった!」



会ったばかりだというのにサリーはミカエルに懐き、ミカエルもサリーのことを孫のように感じているようだった。
名残惜しそうな顔のミカエルに手を振り、私達は行商人の町を目指して歩き出した。

***

少しずつ…だが、確実に近付いている…
森の民に…
ヴェールの仲間に…

会うことで何がどう変わるのかはわからないが、今は森の民を探すしかないのだ。
それが今の自分の使命だ。


そう考えたレヴの手の中で、青い石がきらりと一際輝いた。



5.藍晶石〜Fin