十五の石の物語

「そうですか。
それで、その方の名前は?」

「わしとは年も離れてるしほとんどしゃべったこともないから覚えちゃいないが、元締めに聞きゃあすぐにわかるだろうさ。
手紙を書いてやるから、それを持って会いに行きな。
あ、行商人の町への地図もいるな…
……だが、もう遅い…
明日まで待ってくれ…」

ミカエルにそう言われ、ふと壁にかけられた柱時計に目を遣るともう夜中の時刻を指していた。
先程から何度も激しい睡魔が襲ってきていたのはワインのせいではなかったのだと私はようやくは気が付いた。



「もうこんな時間だったのですね。
遅くまで申し訳ありません…」

「何言ってやがる。
こんな楽しい時を過ごしたのは久しぶりの事さ。
礼を言いたい位だ。
さ、そっちの部屋のベッドを使ってくんな」

「いえ…私は帰ります。
地図はまた明日、いただきにまいります。」

「馬鹿なことを言うもんじゃねぇ。
このあたりにゃ、物騒な奴らだっているんだ。
ここいらは人通りもまばらだからな。
さっきの夫婦みたいなことになったらどうすんだ。」



(それもそうかもしれない…
今から宿に帰ってもまたここに来なくてはいけないのだし、それなら泊めてもらった方が得策かもしれないな…)



「それでは、お言葉に甘えてそうさせていただきます。」

「ちょっと布団がかび臭いかもしれねぇが、我慢してくれよな」

「そんなこと、全然かまいませんよ…」

私はミカエルにおやすみを言うと、そのままベッドに横になる。
ワインのせいか、満腹だったせいか、私は瞬く間に眠りに落ちた…