「あ、あの、誓さん」

「はい」

「私の顔に…何か付いてますか?」

先程から誓さんは、私の顔を凝視しているのだ(それはもう、穴が開く、という表現がピッタリな程に)。

…流石にここまで美形な人に凝視されては落ち着かないというものである。

「…いえ、すみません」

誓さんは何故か、一瞬悲しそうにその美しい顔を歪めて言った。

「?そうですか。…あの、じゃあ私、帰りますね。ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」

私はそんな誓さんに疑問を持ちながらも、ペコリと一つ頭を下げて踵を返した。

「…あの、楓、さん!」

背中越しに私を呼ぶ声に、少し驚きながらも振り返る。

「は、はい」

「……いえ…お気を付けて」

「!」

誓さんは微笑みながら言った。

(き、きれい…)

私は胸がドキリと鳴いたのを聞いた。


中毒的微笑。

(また会いたいな、と)
(思わせるには十分で)