リコリス燃ゆる




レインの腕は、自身のスーツの上着で止血されていた。



「痛そうだな」


「いえ、そんなことは」


「痛いだろ」



強気になるのが彼女の悪い癖。

尽くしてくれるのは有り難いが、やはり俺がいる限りは生きてほしい。



「あの男、すごく頭にきた」


おもむろに言いだせば、レインは曖昧に返事をする。


「俺の物に傷をつけるなんてな。もう少し苦しめて殺せばよかった」


「主があんなのに構う必要はありません。

私が、始末できれば」



「いや、生かしておくだけ無駄だったんだ」



死ぬために生きていた人間だから。

ならばさっさと死ねばいい。



少なくとも俺は生きていく。


自殺願望なんて持たないし、生きる理由も特別見つけたりはしない。


まるで、獣。



狼みたいに卑怯でも生きていく。




「…ああ、月が綺麗だな」



レインは、ぼんやり空を眺めて答えた。



「あなたのためなら、死んでも構いません」