「はは、ははは……」
男はなおも笑う。
そんな強靱な精神で一体どんなテロを繰り広げるつもりだったのか。
考えると鳥肌が立ってきた。
「はは、はははっ。
まだだ、まだだよ。
僕はまだ立てる。
まだ左手が残っているよ!」
男は無理矢理立ち上がった。
口からは血がだばだば漏れる。
殺害に慣れた俺ですらあまりのグロテスクさに吐き気を催した。
なんて呆気ない。
快楽は痛みに通ずるのだろう、男は生きたいと言いながら死に際に立ってもなお痛みを求める。
それが『殺してくれ』と聞こえないから余計に始末が悪いのだ。
「君を殺す、殺す、殺す!
殺すために戦うよ、戦うために生きるよ、生きるためにまた君を殺すよ!」
「不器用で残念な生き方だ。
まさに生きる価値なし、死ぬために生まれてきた命だな」
切れた手首の先端。
血を引きずりながら『生』の提供者を求める男。
けれど残念なことに、俺はまったく優しくないのだ。


