リコリス燃ゆる




黒い銃マグナムで俺の剣を避けた男。

撃たれたらさも痛そうなほど銃の口径はでかい。



「危ないなぁ」


「だからやってるんだ。
死にたくないなら逃げることだ」


「逃げないよ。
君は僕が殺すから」



なにを、と男のニヤニヤ笑いを睨み付けると、革靴の爪先が俺の手元を目がけて飛んできた。

先端には刃物が仕込まれている。



「僕のモノを殺してくれた復讐だから、君を殺さなくちゃいけない」


「死んでも構わないのか。
1人で適う相手と思っているならおめでたいな」


吐き捨てる勢いで言った。

男は銃を捨て、コートの中から二本の短刀を出した。


「その言葉そのまま君に返すよ。

幸い君は一人。
そっちの彼女は利き腕が折れてるから使えないよね」


「なんだ、知ってるのか。

…いや見たんだな、さっきの仕事の最中を」


悪趣味な、と心の内で非難する。

復讐と言いながらこの男は仲間が殺されるシーンを助けもしないで見物していたのだ。