「なら、馬鹿な奴だな。
わざわざ処刑されに来たのか」
「うーん、馬鹿かもしれないが無能ではないよ。
この人数をたった2人で片付ける君たちに興味があったから」
なおさら馬鹿だ。
興味本位ゆえに死に急ぐ馬鹿。
俺が知る限りは新種にあたる。
「最近は、異端者を皆殺しにするとんでもない奴がいるって聞いていたけれど、きっと君のことだね。
いやーまさか、こんな子供だったとは」
「子供とは失礼だな。
未成年だがそこらの役人より頭はいいぞ」
「だろうね。」
男は倉庫内の景色を一通り見回してため息をついた。
ほとんどが刺殺され、中には脳天からばっさり切って原型を留めない奴もある。
それを、子供が玩具散らかした部屋を見るような目をするから癪に触る。
「『煙なき炎』。
そのとんでもない奴を最近はそう呼んでるらしいね。」
「煙なき炎 灰すら残さず。
というわけでお前も切ることになるが」
「うん、そりゃあ、そうだね」
いちいちカチンとくる。
1人で数十人殺した奴を目の前にしても飄々としたその態度が。
俺は3メートルほど離れた距離を一気に縮め、男に切り掛かった。


