――…その時だった。
倉庫から出る直前、一発のパンというコルクみたいな音が鳴ったのは。
背後からやってきたその音は、猛スピードで俺の横を擦り抜けた。
壁に銃弾がめり込むとほぼ同時に紅い血が散って頬や背中に飛んだ。
「――っ!!」
レインが、苦しそうな顔をして右腕を押さえて倒れこんだ。
撃たれたのは彼女らしい。
「困るんだよなぁ、帰ってもらっちゃあ」
男の声がした。
かつん、かつんと妙に鋭い靴音をたてながら、その声の主は死体を踏みつけて歩み寄ってくる。
背が高く、ベージュのレインコートを纏った男だった。
立ち上がろうとするレインを制して俺は男の前に立ちはだかり、剣を抜いた。
クックッ、という気味が悪い笑い声が聞こえる。
顔はよくわからなかった。
「…生き残りかな。
一匹残らず退治したつもりだったんだが」
「そうだよ。
僕は彼らの雇い主だ。
ああ、どうしてくれるんだ、折角金と時間をかけてこんなに集めたのに」
両手を広げて男は嘆く。
雇い主とは、妙な言い方だと思った。


