「これを、君に返そうと思っていた。」 彼は無言でコーヒーを飲み終えたあと、僕に一冊の本を差し出した。 「君が、持っているべきだと思う。」 そう言って、立ち上がり、彼は僕の家から去っていった。 彼は、この家からありとあらゆる朔夜の遺品を持ち帰っていたから、その中のひとつだと思う。 表紙にDiaryと書かれてあるから、おそらくは朔夜の日記なのだろう。 僕はそれを朔夜が使っていたクローゼットの中に仕舞った。