僕が愛した彼女は、朔夜という。 彼女も、僕を愛していた。 僕らはそういう関係だった。 でもある日、ひらり、と朔夜の体が舞った。 僕の目の前で起きている現実に驚きながらも、彼女の体を追って、視界が動く。 彼女は青い空に舞い上がり、見る見るうちに高く、高く昇っていく。僕は手を伸ばすけれど、もう届かない。伸ばした手の先には、離れて小さくなった朔夜と真っ白な昼間の月が浮かんでいて、僕をじっと見ている。 そういう夢を、よく見るようになった。