月の骨




「くどい!」


 ついに斎藤が怒鳴った。


 その目には怒りと、わずかな焦りが浮かんでいた。


「謝る気はない?」

「私は何も知らん!

それ以上言うなら名誉毀損で訴えるぞ。」


 齋藤は吐き捨てるようにいい放ち、僕の神経も限界だった。

 もう駄目だった。これ以上話をしても、何も進まないし、僕だって、本当は彼の謝罪の言葉なんて欲しくない。

 そう、最初から謝罪なんて欲しくない。

 最初から、ずっとそうだった。


 だったら、こんなところにわざわざ来なくても、よかったのだ。僕は、なんて馬鹿だろう。

 そう考えたらおかしくて、思わず笑いが零れた。体の力も抜けていた。