月の骨




「何の用だね?」

 斎藤は、窓を向いたまま、つまり僕の方を見向きもしないで言った。

 その声色は、少しだけ怒気を含んでいたが、この男のものの言い方はいつもこんな感じだ。いちいち怯んでいても始まらない。


「ひとと話をするときは、相手の目を見てって、小学校で教わりませんでしたか?」


 僕は負けじと言い返す。この男を相手に、こういうものの言い方をするのはおそらく、世界中で僕だけだ。