月の骨



 僕が通されたのは、1階の応接室だった。調度品のセンスは、はっきり言ってよくわからないが、それなりに値の張るものが置かれているのだろう。


 そこに、斎藤はいた。


 両手を後ろ手組み、窓から番犬のいる庭を眺めている。



「会長、渡辺様をお連れしました。」


 スーツの男がそういうと、斎藤は窓の方を向いたまま、彼に下がるように命令した。

 その表情は、声色からは読み取れなかった。


 スーツの男も、無駄のない所作で応接室から出て行ってしまった。