朔夜は腕の中で呆れたように笑う。僕は物理が好きで、朔夜は文学が好きだったけれど、僕が話す法則や定理のことは飽きるほど聞いてくれていた。


「そう?僕はね、物理学者も数学者も、ロマンチストが多いと思うよ。」

「そういうものかな?」

「そういうものだよ。目に見えないものや神様が創ったものを追いかけてばかりいる。そういうのって、ロマンチストじゃなきゃ出来ないよ。」

「じゃあ、目に見える星を追いかけてばかりの私は、ロマンチストじゃなくてリアリストかしら?」

 僕の腕に頭を預けて、朔夜は呟く。