僕は目を閉じて、椅子の背にもたれ掛かり、深く息を吐いた。 警告は鳴り止まない。 チャンスは今一度きり。 それでも、閉じた瞼の裏に浮かぶのは、ひらり、と空に舞い上がる朔夜ただ一人。 僕はそれでもやらなければならない。 五年前とは違う。 暗闇に息を潜めて待っていた時が今来たと言うのに。