野菜をひとつひとつ吟味する朔夜の、後ろ姿が好きだった。


 細い首が傾いて、360度、手に持った野菜を点検しているのだ。そうして山の中からいくつも野菜を手にとっては、納得したものだけを買い物かごに入れていた。

 時間をかけて朔夜に選び出されたキャベツやトマトなどの野菜達は、なだかとても特別なものに思えた。




 僕の手元のかごの中には、今は野菜ジュースしか入っていない。





 買い物から戻ると、洗濯物を衣類乾燥機から取り出して、一枚一枚畳む。それをナイロン袋につめて、僕はショッピングセンターで購入した食料と一緒に車に積み込んで、我が家をあとにする。


 帰る前に、戸締りと、留守番電話のメッセージを消去するのを忘れない。