さっき職員室から教室へと向かった時とは
大違いの軽い足取りで職員室へと向かう。


なぜかって?
そんなの野中葵との会話がひとつ減って
しかも、早退して今日は穏やかな一日が
すごせるかと思うと嬉しくて自然と
足取りが軽くなるに決まってる。


ガラッ

職員室のドアを開け、一礼。常識だ。


「吉田先生はいらっしゃいますか?」

「ん?浜塚?渡してくれたのか?」

「いえ。野中君が早退したようなので
この紙をお返しに来ました。」

怖いくらいの満面の笑みで紙を
突き返す。

「困ったなあ・・・明日中には提出なんだが」

「そんなの先生が適当に書いて
出せばいいじゃないですか」

「いやいやそういうわけにはいかんだろ」

「そうですか?私には野中君が大学に行けるだ
なんてこれっぽっちも思いませんが。」

「お前・・まあ俺もそう思うが一応教師として
やらなきゃいけないことだからな」


学校ここまで荒らしといてないが教師だ。
もっとやらなきゃいけないことはあると思うのに

熊先生はひとしきり悩んだ。
そして・・

「あ!!」

その声と同時に毛むくじゃらの中で目が光ったのが
わかった。

「浜塚!地図渡すからこれ、野中の家まで届けてくれ!」

「は?」

「浜塚なら授業ひとつくらい抜けたところで
他生徒との成績の差は雲泥の差だし変わらんよ」

「そういう問題じゃ・・」

ないと思うんだけど。

「じゃ、頼んだよ。どうしても成績が気にかかるなら
次の先生には理由伝えておくから!じゃ!!」


そういって熊先生はどこかへそそくさと
去って行ってしまった。


私は地図と憎たらしい紙を持ってぽつんと
ひとりその場に残されてしまった。



あっりえないでしょ!