ランチの時間になると、りかこは一人教室から出て
誰もいない非常階段へと向かう。
「ついてきてるんでしょ?
わかるようになっちゃいましたよ。あなたがいる気配がするから」
急に問いかけられたことへの驚きと、
いつものりかこに戻っていることへの驚きが混ざって反応できなかった。
「これが私の毎日なんです。これが、私の生活。
こんな荒んだ人間に、ダンサーになれると思います?
ま、あなたにはわからないと思うけど。
死ぬ前だって一流ダンサーで、何一つ苦労も知らずにいきてきたんだろうから?」
「そ、そんなことねーよ?俺だってそれなりに…」
その先を言おうとしたが、言葉に詰まった。
苦労自慢はしたくない。
第一俺は不幸だったかもしれないけど、
小さな幸せのおかげでここまでこれたんだから…
「ほらね。あなたみたいな人、私一番嫌いなんです。」
「お前…」
「何もわかってないくせに、わたしのこと軽々しく言わないで!
どんな思いで、生きてると思ってんの?
上靴のことだって、机の落書きだって、どんなに辛いか…
平気なフリをするのが、どんなにわたしを狂わせるか…あなたにわかる?」


