「でも、これは悲しい涙じゃないかも」

あたしが言うと、詩音は少し考えて

「嬉しい涙も、ほしくなった」

楽しそうに笑った。
そのあと、あたしの耳元に唇をよせ、静かにささやいた。

「ずっと、陶子と一緒にいたいんだ」

この海岸には、あたし達の以外、誰もいないのに。

その言葉をひとりじめしてほしいかのように大切そうに言う。

「迷惑、かなぁ…」

少し自信なさげに、眉をよせる詩音。

そんなことはない!と言おうとしたあたしに


「でも、迷惑でも一緒にいたいや」

詩音は自分の言葉に困ったように微笑んだ。