「早く帰りな」


「はーい」


あーあ、もうちょっと一緒にいたかったな。


「夏休み、紗雪ちゃんと遊びに行きたいから風邪引かれたら困るから―――」


「えっ!」


ちょっと、待って!

ちょっと、待って!

いま、松田さんはなんて言った?

すごい大切なことを言われたような気がしたんだけど!!


「松田さん!!」


「もう言わない」


えーっ、言ってくれないの?

また聞きたい!

聞き違いかもしれないし。


「ほら、帰る」


「はーい」


あーあ、やっぱり言ってくれないんだ。

重い腰を上げ、立ち上がる。


「それじゃ、お大事にしてください」


「ん、ありがとう」


あたしはそっと、松田さんの部屋を後にした―――。