「あっ、卵」


「はい、お好きでしたか?」


「うん、好き」


うわーっ、どうしよう。

普段の松田さんからは“好き”なんて言葉が想像できないから、勝手に心臓が働き出す。


「いただきます」


あたしはうるさい心臓を隠すかのように、松田さんから視線を外しながらも、隣にちょこんと座る。


「紗雪ちゃん?」


「はい?」


「いつまでいるの?」


「――― へ?」


あたし、松田さんが食べ終わるまでいようと思ったんだけど?

…… ダメ、なの?


「当たり前」


「でも食器……」


「美春先輩にメールしておく」


「心配だし……」


「紗雪ちゃんに風邪が移ったらイヤなんだけど?」


そんなの気にしないのに。