“ちょ、紗雪ちゃん!!”と焦ったようにあたしを呼ぶ声を背中から聞こえるけど、シカトしてあたしは自分の部屋に入る。


やっぱり昨日から体調が悪かったんだ!

どうしてあのときもっと聞かなかったんだろう。


今更後悔したって遅いけど…… いまあたしに出来ることをしなきゃ。


優しい松田さんだ。

あたしが松田さんの部屋に戻ることが分かっているから部屋のカギは開いているはず。


カチャッとノブを回したら――― ほら、開いた。


「お邪魔しまーす」


寝ているかもしれない松田さんのために、声を潜めて入る。

部屋の作りは一緒だから、迷わず奥に進んでいく。


「マジで来たんだ……」


「まぁ……」


リビングのテレビの前に座り、定まらない視線であたしさを見つめる。

熱があるせいかな?

なんだか…… 色っぽい。


「紗雪ちゃん?」


「あっ、はい! あの、おかゆです」


小さなテーブルがテレビの前にあるのでそこに置く。

卵だけど…… 大丈夫だったかな?


なにも聞かずに作ったことを、今更後悔する。