「ほら、紗雪ー、早く行ってきなよ」


「だからー、こんな時間には迷惑だから」


「ほらほらー」


なにが“ほらほらー”なんだろうか?

こんな日付が変わるような時間に行ったら、絶対に迷惑なんだよ。

迷惑…… なんだよ。


そうわかっていながらも、ついお姉ちゃんの言葉に甘えて……。


「来ちゃった」


松田さんの部屋の前まできてしまった。


まぁね…… ちょっと確認程度だしね。

お隣さんだからね、これでも……。


“心配”くらい、してもいいよね?


なんて、自分に言い聞かせるように言い訳して、あたしはチャイムを押す。


ピンポーン―――。


押しちゃった……。


カチャカチャと部屋の向こうから音がして。


「紗雪ちゃん? どうしたの」


松田さんが顔を出した。