「今日はあたしが、昨日のお礼にご飯を作りました。 お口に合うかわからないけど…… ぜひ、食べていってください!」


「ありがとう。 玄関を空けたときから“良い匂いがするなー”って思っていたんだ」


ジャケットを脱いだ松田さんがキッチンに入ってきた。


「なーに、作っているの?」


「~~~ッッ!」


後ろから松田さんがのぞき込む。


「クラムチャウダーかー。 紗雪ちゃん、好きそうだね」


「…… 好きです」


いつもより近い距離。

そのせいで、松田さんの優しい声がダイレクトに伝わる。


やばい、本当に松田さんの声はやばい。

聞いているだけで、なんだか体から力が抜ける。


「紗雪ちゃん?」


「…… なんですか?」


「なんか、顔が赤いなーって思って……」


松田さん。

それはきっと、松田さんがいつもより近い距離にいるからです。

離れて欲しいけど…… 離れて欲しくない。

松田さんの熱が心地良い―――。