――― ピンポーン。


軽快な音が聞こえた。


「はい?」


部屋から聞こえるその、声。


「ちょ、お姉ちゃん! なんてことをするの」


「紗雪が押さないから押してあげたの」


お姉ちゃんが何の準備も無く押したせいで…… 心の準備が出来てない。

もう、お姉ちゃんのバカッッ!!


「二人して…… どうしたんですか?」


覗き窓から見たんだろう。

あたしたちの姿にあまり驚きが無く、お姉ちゃんとあたしを見比べている。


「ほら、紗雪っ」


「うっ、うん」


お姉ちゃんに背中を押され…… あたしは胸の前に持っている箱を差し出した。


「あのっ、えーっと……」


心の準備が出来ていなかったせいか、うまく言葉が出てこない。

恥ずかしさも手伝い、まっすぐ松田さんをみることも出来ない。


…… こんな失態を晒すつもりはなかったんだけどな。